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松茸が教えてくれる、人と自然のちょうどいい関係

松茸が教えてくれる、人と自然のちょうどいい関係

撮影:Y・T / 寄稿:Y・T

撮影場所:長野県 上田市 塩田平 松茸小屋

今月の一枚は、良い香りがしてきそうな秋の味覚、松茸の写真です。

松茸には傘の開き具合で、つぼみ、中開き、開きがあり、つぼみは味と歯ごたえが良く、土瓶蒸しや炊き込みご飯に、開きはやわらかく香りが強く、焼き松茸として供されます。
写真の松茸は中開きで、食感、味、香りのバランスが良く、希少性もあることから高値で取引されることがあります。

独特の香りと歯ごたえを持つ松茸は、古くから日本人に親しまれてきましたが、松茸はどこの山でも採れるわけではありません。実は、松茸が育つには、いくつもの条件がそろう必要があります。
松茸は、主にアカマツの根に「松茸菌」と呼ばれる菌が共生して生育します。さらに、日当たりがよく、風通しがあり、水はけのよい環境を好みます。
土壌は比較的やせた酸性土壌で、落ち葉や腐植が厚く積もりすぎていないことも重要です。
つまり、木々や草が生い茂り、落ち葉がたくさん積もった、栄養豊かな森が必ずしも松茸にとって理想的とは限りません。
ここで興味深いのが、人間と松茸との関係です。かつての日本の里山では、人々が薪や炭を得るために木を伐り、下草を刈り、落ち葉を集めていました。
こうした人間の営みは、一見すると自然に手を加える「環境改変」のようにも見えます。
しかし、その結果として林の中に光が入り、落ち葉や腐植が厚く蓄積することが抑えられ、アカマツと松茸菌が共生しやすい環境が維持されました。
そして、それは松茸にとっても好都合な環境だったのです。
ところが、生活様式が変化し、薪や炭を使う機会が減ると、里山は次第に利用されなくなりました。木々や下草が生い茂り、落ち葉や腐植が蓄積し、林内が暗くなっていきます。
アカマツが衰退することもあり、松茸が生育できる環境も少なくなっていきました。

「自然を守る」と聞くと、人間が自然から離れ、できるだけ手を加えないことを思い浮かべるかもしれません。しかし、松茸の姿を見ていると、それだけが自然保護ではないことに気づかされます。
松茸にとって重要なのは、手つかずの大自然そのものではなく、アカマツと松茸菌が共生し、適度な日当たりと乾燥、水はけのよい、やせた土壌が保たれた環境です。
そして、かつての里山では、人間の暮らしがその環境を自然と維持していました。人間が自然を利用することと、自然を壊すことは、必ずしも同じではありません。
必要以上に自然を改変するのではなく、自然の仕組みを理解し、その環境に合わせて適切に手を入れる。
そんな人と自然との距離感、生態系の一部としての人間の役割が、松茸の育つ里山には残されているのかもしれません。
秋の山で見つかる香り高い松茸。その香りには、アカマツと菌の共生だけでなく、長い年月にわたって自然と関わってきた日本人の暮らしと、里山という環境の姿が隠れています。
松茸を守ることは、松茸だけを守ることではありません。人間と自然が互いに影響しながら形づくってきた、里山という環境そのものを次の世代へ残していくことなのかもしれません。

2026.10