今月の1枚
Title
途中下車、湖上の駅
撮影:Y・T / 寄稿:Y・T
撮影場所:奥大井湖上駅 大井川 静岡県
今月の一枚は、湖上に浮かぶ駅舎の写真です。
この駅は、先月寄稿した大井川鉄道で千頭駅から南アルプスあぷとラインに乗り換えた先にある奥大井湖上駅です。
大井川水系の長島ダム建設によって生まれた接岨湖に突き出した半島状の地形に位置し、奥大井レインボーブリッジとともに、
まるで駅舎が湖上に浮かんでいるかのような美しい景観を楽しむことができます。また、周囲に街灯などの人工光源がほとんどない秘境駅であることから、
夜には満天の星空を楽しめる「星空列車」が運行されることもあります。
駅利用者の多くは観光客で、駅からは橋や遊歩道を渡り、接岨峡温泉へ向かうハイキングコースが整備されています。
南アルプスあぷとラインには、奥大井湖上駅より下流側のアプトいちしろ駅~長島ダム駅間に、最大90パーミルの急勾配区間があります。
これは普通鉄道として日本一の急勾配であり、日本で唯一のアプト式(ラック式鉄道)による運行が行われています。
急勾配区間では専用の機関車を列車の下側に連結し、ラックレールと呼ばれる歯形レールとかみ合う歯車の力を利用して登り降りします。
現在では観光路線として知られる大井川鉄道井川線ですが、もともとは大井川上流部で進められたダムや水力発電所の建設のために造られた産業鉄道でした。
建設資材や機械類を山奥まで運搬する重要な役割を担い、その後も発電施設の維持管理を支える路線として活躍してきました。
近年は地球温暖化対策として脱炭素化が求められており、水力発電や風力発電などCO2排出量の少ない発電方法への関心が高まっています。
しかし、目の前に広がる雄大な接岨湖も、長島ダムの建設によって生まれた人工湖です。水力発電は再生可能エネルギーとして重要な役割を担う一方で、
自然の地形や環境に大きな影響を与えて実現されたものでもあります。
湖上駅から広がる景色を眺めていると、私たちが日常的に使う電気が、多くの人々の努力と自然の恵みの上に成り立っていることを改めて感じさせられます。
自然への感謝の気持ちを忘れずに、エネルギーを大切に使っていきたいものです。